【PW有】バンケットコンパニオンの仕事マニュアル
用語の説明
バンケット・・・宴会、晩餐会、祝宴を指す
バンケットルーム・・・ホテルの宴会場
バンケットコンパニオン・・・おもてなし空間を華やかに彩り、会を演出し、大切なお客様に満足してお帰りいただくためのサービス技術をマスターした接客のスペシャリストをいう
バンケットコンパニオンの使命
ホテルの宴会場や料亭のような、非日常的な場面で開かれる会で、ゲストに喜んでいただけるように、ホストのおもてなしを徹底的にフォローします。おもてなしは、バンケットコンパニオンの使命とえいるでしょう。
コンパニオンとしてのおもてなしの基本
ポイント① お客様を動かさない
例えばお客様が食事中にフォークを床に落としてしまったらすみやかに拾って差し上げる、必要なものがあれば取りそろえて差し上げるなど、身の回りのことがらを見逃さず、サービスに徹するということ。お客様が必要とされていることを、先に先に気づいて差し上げる。これが接客の基本です。
ポイント② まずは何より身だしなみ
出会った瞬間、第一印象として信頼感をもっていただくためには、まず身だしなみを整えることが大切です。心がけたいのは「清潔感」。身につけるものだけでなく、髪型から爪の先にいたるまで全身を確認しておきます。
ポイント③ 笑顔は誠意の印
お出迎えやお見送りの時、パーティ中など、おもてなしの最中にはつねに笑顔を絶やさないことが大切です。品よくほほえむか、ニコニコしながら応対しましょう。笑顔によってお客様が安心感をもち、なごやかな雰囲気をつくり出すことができます。
笑顔のポイントは、口角を数ミリ上げること。口角を上げるだけで気もちが明るくなり、笑顔をつくることで楽しいと感じることができます。笑顔は連鎖するため、周りの人も自然につられて笑顔になります。人は自分を笑顔にしてくれた相手に対して好感をもち、それがよいスパイラルにつながっていくのです。
ポイント④ つま先を相手の方に向ける
笑顔と同様、おもてなしをする際に相手によい印象を与えるのは、美しい立ち居振る舞いです。下腹を引き締め、背筋を伸ばしましょう。心があるかないかが相手に伝わってしまうのが、顔と体の向きです。体を相手の正面に向けておもてなしをすることが、好印象を与えます。
ポイント⑤ 乾杯のタイミングを逃さない
おもてなしの準備として、バックヤードでの子細な打ち合わせも重要です。会の趣旨の確認や主賓の確認、進行の確認では、ドアオープンから誘導、特に乾杯までの内容がパーティの命となります。
宴会のスケジューリングの中でいちばん大切なのは、「乾杯のタイミング」です。通常、コンパニオンとしての打ち合わせでは、下記のようなことがらを確認します。
・乾杯前に主催者をはじめ来賓のあいさつが何人あるか
・その後紹介などがあり、何時に乾杯となるか
・乾杯の飲み物(たいていはビール)は、コンパニオンが各自でもって入場するのか、テーブルにあらかじめ置いてあるのか、置いてあるなら何時にオンテーブルにするか、抜栓はしてあるのか、もしくはシャンパンや鏡開きの樽酒なのか。
・鏡開きなら木槌や半被のサポート係と枡酒をふるまう係は誰にするか、どこに控えるか、など
とにかく、乾杯を含めた進行がスムーズに行われるよう、主催者を交えた打ち合わせをしっかり行い、細心の注意をもって準備を行います。
ポイント⑥ ビールの銘柄は要注意
大パーティでは事前にホテルが用意したもので指示されることが多いのですが、お座敷でのご宴会では、コンパニオンが銘柄確認してからお出しする場合もあります。
お客様の好みがある場合はそれに従えば問題ありません。しかし財閥系(銀行やグループ会社など)の接客の場合、関連ブランドの銘柄を間違っては失礼にあたり、お客様が不愉快な思いをされてしまいかねません。
財閥系や関連会社の方は、その銘柄しか飲まない(公では飲んではいけない)といったことがあるようです。
例)キリンは三菱(旧三菱財閥)、アサヒは住友(旧住友財閥)、サッポロは美容(旧安田財閥)といった感じです。
宴会の席でのおもてなしマナー
ポイント① 乾杯後のお酒の用意の仕方
乾杯のビールが済んだあとは、再度ビールをおそそぎしながら次の飲み物をうかがいます。その際、よくお会いするお客様の好みは覚えておき、スムーズにご用意できるようにしておきたいものです。
お酒を召し上がらない方には、即座にソフトドリンクを用意します。常にコーヒーを召し上がる方だとわかっていれば、事前に会場裏で用意をしていただきます。それでも乾杯のビールグラスは下げません。場面とメンツによってお酌をお受けになる場合もあるからです。
焼酎の薄めのお湯割りの方には、氷を1個入れます。ポットのお湯は熱湯の場合が多いため、お酒が薄めのつくり方だと熱くてそのまま飲めたものではないのです。適温に調整する心づかいも大切です。
また、主賓のみなさまやお年を召された方には気もち薄めにお酒をおつくりするとよいでしょう。パーティや宴会は社交であり仕事の場です。みなさま酔っ払いに来ているのではありません。日本酒を飲む場面では、さりげなくチェイサー(お冷)を置いて差し上げたいものです。
ポイント② 上手なお酌のタイミング
やみくもにお酌を受けていただこうとしても、「まだいいよ」と断られることがしばしばあります。そういう場合でも、お酌ができるタイミングがあります。それは、お客様がグラスに手を伸ばした瞬間。手を伸ばしそうな時に、ビールびんや徳利を両手で握りしめ、にっこり笑って見守りましょう。自分を気にかけてくれているんだなと気づいたお客様は、きっと2口以上飲んでそそぎやすくしてくださります。
また、お客様の話がウケタ時にも、すかさずお酌をうながします。気分のよい瞬間は、とかくお酒が進むものです。いずれにせよ絶妙のタイミングを要しますが、こうしたきっかけがあれば、気もちよく飲んでいただけるでしょう。
接待する側が酔いつぶれてしまっては話になりませんので、お酒はほどほどに。幹事さんへは必要以上におすすめしてはいけません。幹事さんだけでなく、接待する側の上司も酔いつぶれてはいけません。
ポイント③ 粋でありたい「差しつ、差されつ」
ついだりつがれたりしながらお酒を飲む日本の伝統「差しつ、差されつ」にも、立ち居振る舞い同様、はしを美しくもつもと同じくらいの自然な感覚で手さばきを身につけていれば、おもてなし道につながると思います。
ポイント④ お酒の美しいそそぎ方
ビールの場合は、まず右手でびんの下部を上から、左手でびんの首あたりを下からもって持ち上げます。この時、ラベルは上向きにします。びんを傾けたら、そそぎ口あたりを左手人差し指の上に乗せて軽く支え、びんがグラスに当たらないようにしてそそぎます。そそいでいただく場合は、グラスを傾けすぎないようにして、コップの底に手を添えていただきます。
いわゆる「置き酌」はやめましょう。置き酌とは、置いたままのグラスや杯にビールをそそぐことです。まるで「残ったビールをやっつけてしまえ」のような行為ですし、声もかけずにそそいでしまうと、お客様が気づかずにグラスを手に取った際、お膳にお酒をそそいでしまうことにもなりかねません。
また、基本的に、残りが少なくなったビールをそそぐのは好まれません。たまたま最後までそそぎきってしまうタイミングになった際には、「濃いところまでスミマセン」とお断りします。
ワインの場合、右手でびん底をもち、左手でびんの首を下から支えるようにもってそそぎます。この時、ビールと同様、ラベルが上側に来るようにします。ワインはビールと違って、テーブルに置かれたままのグラスにそそぐのがマナーです。
飲むときは、ワイングラスの脚を親指と人差し指でもち、そのほかの指は自然に添えましょう。ワインでの乾杯は、グラスとグラスをぶつけず、目の高さに持ち上げてするのが正式です。
日本酒の場合、徳利は胴部分を右手でもち、左手は下側にそえる形にします。熱燗の場合は焼けどをしないように首部分をもち、下側はふきんなどで支えましょう。
なお徳利の口が細くなっている部分がある場合は、そこからそそぐのではなく、細くなった部分を上にして反対側からそそぎます。
お酌を受ける場合は、盃を置いたままにせず、親指と人差し指で上部をもち、もち上げてそそいでいただきます。女性は左手を底に添えていただくほうが美しく見えるでしょう。